【注目インタビュー 私のターニングポイント Vol.19】マキノ ノゾミ『常に「今までやっていないことに挑戦しよう」と意気込みで芝居を作ってきた』(掲載開始日:2008年7月17日)

マキノ ノゾミ(まきの・のぞみ)
1959年9月29日、静岡県生まれ。
84年、劇団M.O.Pを結成。その後、脚本家として演出家として俳優として、内外で幅広く活動している。2002年後期のNHK連続テレビ小説では、『まんてん』の脚本を担当した。2010年に劇団M.O.Pを解散することを明言しており、今後の動向が注目されている。

「オリジナル脚本が書けなかったら解散」と宣言したのは、旗揚げして5年目でした(マキノ ノゾミ)

劇団M.O.Pは、「マキノ・オフィス・プロジェクト」の略でして、関西の学生演劇で知り合った仲間と芝居をはじめようというとき、同じ劇団名は使えないからとりあえず仮の名前でもつけておこうと、わりと安易な理由でつけたんです。それが来年2009年で25年も名乗り続けることになるというのは大変なことだなとは思いますが、今振り返ってみれば、いろいろな転機がありました。

最初の転機は旗揚げして5年目、オリジナル脚本による公演をはじめたこと。それまでつかこうへいさんの芝居をずっとやってきて、可能性も限界も見えてきた面もあったし、個人的には30歳になる直前のことで、「このまま同じことを続けていたらダメなんじゃねぇの」というせっぱつまったものがあって(笑)、「もし(オリジナル脚本を)書けなかったら解散だ」と宣言したんです。

で、幸いなことに、『HAPPY MAN』という作品を書き上げることができ、それを上演するまでにはいろんなプレッシャーがありましたけど、「まぁ、いいんじゃねぇの」というお客さんの反応を得ることができた。これで、劇団だけでなく、自分自身にとっても30歳以降に芝居を続けていくだけのはずみがついたんですね。

ちなみに、『HAPPY MAN』はその後、チラシの絵を描いてくれた漫画家の石渡治さんと「アクション」誌上で連載することになりまして、脚本家として初めて印税をもらうきっかけを与えてくれた作品でもあります。

「稽古はバイト後の夜ではなく、昼にやる」その言葉についてきた仲間が今のメンバー(マキノ ノゾミ)

劇団活動は当然ながら、それだけで食っていけるものではなく、僕も32歳までは工事現場のバイトをして生活していました。それが、『HAPPY MAN』の印税のおかげで細々とながらも専念できるようになり、そのチャンスを生かそうと修業のつもりで必死にいろいろな方法を試していました。

劇団の稽古を夜ではなく、昼間にやろうと宣言したのはそのころで、これもある意味では大きな転機でした。「バイトが終わったあとで2~3時間程度の稽古をしているだけじゃ、きっとプロにはなれねぇぞ」という問いかけをしたわけですが、それで辞めていった劇団員もいましたし、それでも参加すると言って頑張ってくれたメンバーが、後の劇団を作っていきました。

それが1993年ごろ、旗揚げしてそろそろ10年目をむかえようとしていたころの話で、第三の転機はその3年後にやってきました。

そのころ、劇団は『青猫物語』という作品で旅公演を成功させたころで、それまで劇団を制作面で支えてきてくれたメンバーから「劇団を維持するためにまた旅公演をやってくれ」という要求があったんです。ところが、小さな劇団なので、旅公演をするようになると新作に力を注ぐことができなくなる。そこで僕は、その要求を拒否したんです。ある意味でそれは、「劇団ではメシを食わない」という僕なりの決意だったわけですね。

それをきっかけに、それまでの制作スタッフとは決別し、制作を外部に依頼して公演を行うという、今に至るスタイルを作ることにもなりました。

「劇団解散」は、今までやってきた中で、最もスリリングで興奮できる試みです(マキノ ノゾミ)

ある面ではプロ意識を求め、また別の面ではアマチュア的な純粋さを求め、要するに「草野球の試合にプロ級の選手を起用したい」なんてワガママにも似た無茶な要求をし続けて今に至るわけですけど、それだけに、毎回の公演で得られた経験は、とても濃密でした。

つねに「今までやったことのないことに挑戦しよう」という意気込みで芝居を作ってきたつもりだし、逆に「もう次はないかもしれない」というスリルが麻薬のような魅力にもなって、ここまで続いてきたのかもしれません。

「劇団解散」というのはそういう意味で、「今までやったことのないこと」のひとつで、「今のメンバーで公演を行うのはあと3回」という決断は、僕の中で自然に浮かび上がってきた感じですね。

公演チラシにも書いたようにメンバーの何人かが忙しくなって全員が集まりにくくなってきたとか、個人的にも劇団活動を続けていくには体力的にキツくなってきたという事情もあるんですけど(笑)

あえて「あと3回」としたのは、そういう限られた期間の中で、どれだけのものが作れるのかを見てみたいなという期待感があったから。実際、解散の話を切り出した去年から、メンバーたちからはすごい意気込みを感じますし、僕自身、すごく興奮できる作品になりそうです。

そんなモロモロの意味を含めてカウントダウン公演、どれも決して見逃せないですよ。

マキノ ノゾミさんへQ&A

Q:最近、読んで面白かった本は?
A:香山リカさんの著作を立て続けに読んだんですが、ルックスに先入観を持っていただけに、その深さに衝撃を受けましたね。
Q:もし、演劇をやっていなかったら?
A:間違いなくロックンローラーになっていたはず。少なくとも、大学生になったときは、そのことしか頭になかったですね。
Q:初めて感動したお芝居は?
A:つかこうへいさん『飛龍伝』。ロックンローラーではなく、「つかさんになりたい」と思っていた。人生を変えた体験でした。

これから演劇を楽しもうと思っている人へ

演劇の魅力って、その芝居が上演されている間だけにあるんじゃなくて、例えばチラシを見て「面白そうだな」と思った瞬間だとか、チケットを買って「どんな芝居になるのかな」って想像するところから始まってるものだと思うんです。ロビーの休憩時間や、席に座って上演を待つ間の時間とかも、わくわくしますよね。とにかく、そういう魅力を味わい尽くしてほしいですね。

これから演劇をしようと思っている人へ

ひとことで言うなら、できるだけたくさんの芝居を見ることだと思います。名前を挙げるならば、いのうえひでのり君。彼ほどいろんな芝居を見ている演劇人を僕は知らないです。演劇人である以前に、演劇ファンなんでしょうね。だから、これから演劇やろうとする人たちにとっても、たくさんの芝居を見ることはいろんな発見を与えてくれるだろうし、演劇ファンであることが大きな励みになるはずだと思うんです。

マキノ ノゾミさんの次回公演情報

「阿片と拳銃」の画像画像を拡大する
阿片と拳銃

「今のメンバーで公演を行うのは、あと3回」マキノの宣言からはじまったカウントダウン公演の第1弾。時代も場所も違う3つのストーリーが交互に繰り返され、つづれおりのように収斂していく挑戦的な脚本に、3年振りに集まった勢揃いの劇団員たちがどう立ち向かうか? マキノノゾミの新作は限りなくスリリングだ!

大阪公演 東京公演
2008年7月11日(金)~13日(日) 2008年8月6日(水)~18日(月)
松下IMPホール 紀伊國屋ホール

[OTHER TOUR<会員制>]

松山公演 高知公演
2008年7月18日(金)・19日(土) 2008年7月23日(水)~26日(土)
愛媛県民文化会館サブホール 高知県民文化ホール・オレンジ
須崎公演 王子公演
2008年7月28日(月) 2008年8月20日(水)
須崎市民文化会館 北とぴあ・さくらホール
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取材・文/ボブ内藤(方南ぐみ) 撮影/石井和広(TFK)