【注目インタビュー 私のターニングポイント Vol.6】片桐 仁 『お笑いと演劇の中間のところで細々と活動しているのが僕らラーメンズなんです』(掲載開始日:2008年4月17日)

片桐 仁(かたぎり・じん)
1973年11月27日生まれ、埼玉県出身。
多摩美術大学時代に小林賢太郎と共にラーメンズを結成。99年、NHK「爆笑オンエアバトル」に第1回から参加し、人気を博す。以後、舞台を中心に活動を続け、独自の世界を確立した。ソロとしてテレビ、映画などに出演するかたわら、舞台での客演も多数。文章にもその個性と才能を発揮し、雑誌やwebでの連載を持っている。

「絵描きでは食っていけないぞ」という漠然とした不安からラーメンズを結成(片桐 仁)

ラーメンズの活動を始めたのは、多摩美術大学の版画科の同級生の(小林)賢太郎と出会ったのがきっかけでした。

絵を描くのはすごく好きだったんですけど、一度、近所の美術館で開かれた展覧会で、ハガキ大の作品を10点ほど出品して、1枚売れたら1,000円もらえるみたいな話を聞いてわくわくしていたんです。ところが、僕の絵は1枚も売れなかったんですよ(笑)。今考えてみると、僕の絵はすべて自画像だったので仕方ないといえば仕方がないんですが、ともかくそれで、どうやらプロの画家としてやっていくのは、そうとう難しいことだぞということに気づきはじめていました。 そんなある日、相方に誘われて漫才をはじめることにしたんです。

当初は、「女の子にモテそうだから」という軽い理由でしたが、学内で毎月ライブをするようになると、毎回ドッカンドッカン受けるのが気持ちよくて、表現のはけ口を与えられたような気になりました。

ただその一方、他の大学が参加するイベントではぜんぜんネタが受けなかったりすることもあったんです。また、大学卒業後にもいろんなオーディションを受けたんですけど、まわりの人たちの意気込みというか、「これで食っていくぞ」という気構えに圧倒されて、「これは本気でやらないとダメだぞ」という意識が次第に芽ばえていきました。

最初は青春の鬱憤のはけ口だったのが、ある意味で将来のための就職活動のようなものになっていってたんですかね。

「自分たちの売りって何なんだろう」と考えた末、コントになっていくんです(片桐 仁)

ラーメンズは劇団なのかってよく聞かれるんですが、たぶんそうなんだと思いますね。

というのも結成当初、僕らは漫才もよくやっていたんですけど、相方のボケに対して僕がどうツッコミを入れるか、細かい台本になって決まっていたんです。ところが、漫才というのは本来、台本などはそれほど重要じゃなくて、お客さんの反応に合わせて作っていくものなんですよね。つまり、僕らがやっていたのは「漫才師という役を演じている2人芝居」のようなものだったと言えるかもしれない。結果、「自分たちの売りって何なんだろう」ってことを考えた末に、コントを中心にネタを作るようになっていくんです。

だから、ラーメンズの活動がテレビや映像中心ではなく、舞台が中心になっていったのは意識的にそうしていたからではなくて、ごく自然なことだったんだと思います。

また、僕が粘土作品を作ったりしているのも自然な流れ。そもそもこれは、雑誌連載のためにはじめたことなので、締め切りに追われて芝居の稽古場でも制作していたりして大変なんですが、「コツは止めないこと」というのを自分に言い聞かせて無理矢理楽しんでいます。あれっ、これは以前に一度作ったことのあるパターンだなと気づいたりすると、すっかり煮詰まってしまうんですけどね。かつてウルトラマンシリーズを作った美術作家の人が週に1度、独創的な怪獣を生み出していたことを思うと、心から尊敬してしまいますね。

初めて俳優として大きな芝居に客演したのは、とても新鮮な体験でした(片桐 仁)

ちなみに、ターニングポイントということで言えば2004年の夏、G2さん演出、後藤ひろひとさん作・出演の「ミッドサマー・キャロル」という芝居にキャスティングされたことは、とても新鮮な体験でした。ガマ王子vsザリガニ魔人はこれが、ラーメンズの活動とは別に、単独の俳優として出演した初めてのお芝居だったんです。

何が新鮮だったかって、この芝居では伊藤英明さんや長谷川京子さんをはじめ、10人以上の人が舞台にいましたから、たったふたりでいくつもの役を演じるラーメンズの公演に比べて、セリフが圧倒的に少ないんです。それで、「セリフがないときには何をしていればいいんだろう」なんて不安になって、演出家のG2さんに相談したりして。

そもそもこの「演出家」という人の存在自体も不思議でした。G2さんは、体はいかついんだけど、すごくやさしい人で、僕が「ここは笑いをとりにいくぞ」なんて張り切って芝居をしていると、「無理に笑いをとらなくてもいいですから、役になりきることに専念してください」って丁寧に説明してくれるんです。ラーメンズの場合、賢太郎が脚本家で演出家ということになるわけですけど、彼は自分も演じなくちゃならないですから、何もしないで僕の芝居をじーっと見ているわけにはいかないんですよね。

結果的に、そうやって大勢の人が集まって、ひとつの芝居を作っていくという作業はとても新鮮で楽しかったです。今まで、相方に言われて無感覚にやっていたことも意識的になれたというか、相乗効果として表現の幅が広がったようにも思うんですよ。いや、思いたいんですよ。

片桐 仁さんへQ&A

Q:最近、面白かった本は?
A:土方久功さんの「ぶたぶたくんのおかいもの」はすごかったですよ。パン屋のパンが人間の顔の「かおつきパン」だったり......とにかく読んで下さい。
Q:初めて感動したお芝居は?
A:お芝居じゃなくて映画なんですけど、「バック・トゥ・ザ・フューチャー」シリーズを初めて見たときは、衝撃を受けた覚えがあります。
Q:最近、ハマってることは?
A:キャストパズルにハマってます。あとテルミン(ロシアの電子楽器)とマトリョミン(マトリョーシカの中にテルミンが入ったもの)。

これから演劇を楽しもうと思っている人へ

演劇って、脚本はあっても映画みたいに毎回同じことをやるわけではないし、かといってスポーツのように結末がまったくわからないわけでもない、不思議な体験だと思うんです。だから、ごくたまに「ラーメンズの公演を観て芝居にハマりました」なんて言ってくれる人がいると、すごくうれしいんですよ。そういう楽しい出会いをしてほしいですね。

これから演劇をしようと思っている人へ

演劇って、お客さんにとっては、生身の役者が目の前で演じてるって魅力があると思うんですけど、それは演じ手にも同じなんですよ。お客さんの笑いや拍手って、他では味わえない麻薬にも似た魅力があるんですよね。だから、やろうかどうか迷っている人は、とにかくやってみるといいと思います。

片桐 仁さんの次回公演情報

GOD DOCTOR(ゴッドドクター)の画像画像を拡大する
演劇大宮エリー第1回公演 GOD DOCTOR(ゴッドドクター)
2008年5月21日(水)~25日(日) 吉祥寺シアター

映画監督・放送作家・脚本家・CMプランナー・コピーライター・作家など幅広く活躍する大宮エリーが舞台に初挑戦する意欲作がいよいよ登場。片桐仁をはじめ、石田ひかり、松村雄基、遠山景織子、山下真司、板尾創路(松村と山下の競演は「スクール・ウォーズ」以来!)という異色のキャストがせいぞろい。「人間をしあわせにする病院」で、ゴッドドクター(神の医者)になるべく勤務する5人の研修医の物語を見逃すな!

東京公演兵庫公演
2008年5月4日(日)~5月18日(日)2008年5月22日(木)~5月23日(金)
新国立劇場兵庫県立芸術文化センター
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取材・文/ボブ内藤(方南ぐみ) 撮影/石井和広(TFK)